はとにかく賛成しない。他の人を雇った方がいい。」と、藪蛇《やぶへび》にならないように簡単にいった。
「でもなぜ新子さんを、もう一度呼んだらいけないの?」
「そんなハッキリした理由はないさ。あるはずがないじゃないか、しかも一度、貴女と感情の衝突をした人を……」
「だって、それは私が悪いと思うから、謝るつもりなの……」
「しかし、謝ってもらって、来たところが、あの人もいい気持はしないだろうし、貴女だって、きっと何となくそれに拘泥《こだわ》るだろうし……」
「貴君妙だわ。とても、妙だわ。貴君が反対なさるなんて妙だわ。」夫人は、前川の鼻の先で、チラチラ笑いながら、つぶやくように云った。
妙だと云われれば、妙に違いないだろうと思うと、前川はいよいよ不愉快になってだまってしまった。それにしても、片足をあげれば、その片足に、他の足を挙げれば、その足に、とりもち[#「とりもち」に傍点]のようにくっついて来て人を窮地に陥れて喜ぶような夫人の性癖を、今更のように、憎々しく感ぜずにはいられなかった。
「じゃ、私路子さんと、相談して、とにかく、新子さんの内意を訊いてもらうわ。向うで、来たいといえば、貴君だっ
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