「前川さんもそれと知ったら、探しそうですか。」
「その危険もあるし、ほかに私が考えていることがあるの。とにかく、あなたあの女の在家《ありか》を突き止めてくれない?」
 圭子を使っている上、木賀も参加させて、どちらからか、事の真相を、一刻も早く知りたい夫人の心である。

        六

 長い間の接吻――それは、偶発的でも、突発的でもない……。
 前川の気持は、青年のように昂揚し、幸福と歓喜に躍り上った。もちろん、それ以上のものを求めようなどという気持の起らないほど、理想主義的なものであった。
 持って生れた平和な性《しょう》から、不満な家庭の味気なさに安住することに努め、内にも外にも、人間らしい色彩を失いかけていた彼である。
 若い純情な、愛し合う男女が、最初の接吻に、陶酔し、それ以上の邪心がないように……前川も、嵐もなく夕立もなく、心と心とが相触れて獲た新子の唇に、充分満足し、青年のような歓喜に躍り上っていたのである。
 仮に人生を五十とするならば、あと十年足らずの前川なのだが、恋愛ヌキの漁色だけに、惑溺している知己のAやBを、心の内に思い起しながら、
(俺は君達と少しは違
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