うのだ!)と得意な気持さえ、胸に湧いて来た。
 珍しく、十二時近くまで、スワンで過ごして、日比谷から議事堂横を、自動車で走り過ぎながら、前川は幾年ぶりかに、生甲斐のあるような楽しさを感じた。
 しかし、そんな多くの男性が、そうであるように、敬遠して独りにしてある夫人に、何か気の毒のような気がして、妻にも一層優しくしなければならないというように、明るく物が考えられて来るのだった。
 門をはいって、植込から見上げると、夫人の居室に、水色のカーテンごしに、ぼっかりと灯がついているのが見える。
 彼がモザイクの三和土《たたき》に、靴を脱いでいると、珍しく夫人自身が、階段を走り降りて彼を迎えた。
 前川の楽しい気持は、そのまま他愛ない微笑となって、夫人を見た。
「おや、大変なご機嫌ね。」と、夫人は、グッと前川の胸元に、近寄って来ると、若妻のように、前川の唇のまわりの匂いを鼻でクンクンかいだ。
「お酒召し上ったのね。」
「うん、お止しよ。」と、やさしく肩に手をかけて、押しのけようとしながら、前川は久しぶりで、夫人を抱《いだ》き上げたいような気がした。
 しかし、夫人は彼の手を冷たく退けながら、ごく
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