て、圭子はついに、我が事のように頬を染めて、
「お恥かしいんですけれど、ただ今|酒場《バー》に出ております。」と、云った。
「まあ、酒場《バー》に、じゃ女給さんですか。」と、夫人の言葉には歴々《ありあり》と、嘲《あざけ》りと侮蔑とが強く響いた。
「いいえ。カウンターのようなことをしているようでございます。」圭子は、あわてて打ち消した。
七
新子が、バーに出ていようなどとは、さすがの夫人も思いがけないことだった。だが、この頃前川氏が、時々酒気を帯びて家に帰って来ることを、それに照し合わせると、良人と新子とを掩《おお》う膜が、一皮一皮めくり取られて来るような気がして夫人は意地のわるい快感に、興奮しながら、しかし表面はあくまで、冷静に、
「たとい、カウンターにしろ、あんな方が、バーに現われるなんて、勿体《もったい》ないじゃございませんか。あんなに、教養も学問もおありになる方が……そんなにまで、身を落しておしまいになるんでしたら、私前川とも相談して、どこへでも、お世話致しますのに。」と、あくまで思いやりぶかい言葉であった。圭子は、ぼんやりと、
「でも、何ですか前川さんのお
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