世話で、はいったようなことを申しておりましたが……」と、云ってしまった。
「まあ! 前川の世話! そんなこと、私にはちっとも申しませんの。おかしいですわねえ。でも、前川の世話だと致しましたら、あの人も考えなしですわ。そんな場所へ新子さんを、お世話するなんて、軽率きわまることですわ。」そう云いながら、もうハッキリ良人と新子の尻尾を掴み得たという、あさましい快感で、モヤモヤ逆《のぼ》せ上って来た。
 これ以上叩けば、もっとどんな大きい埃でも出て来るかもしれない。幸いに、この圭子という人物が、白紙のように表も裏もなく、その上こちらの思うとおり、どうにでも染まりそうである。夫人は、自分の策略の成功にひどく、上機嫌になって、
「その酒場《バー》、やはり銀座ですの。有名な家?」と、訊くと、
「いいえ。新しい家で、私名前は存じておりませんの。私、バーなどへ出るの大反対でしたから、よく聴いておりませんの。」と、云う圭子の答に、ウソはなさそうである。
「ほんとですわ。バーへ、お世話するなんていやですわねえ。でも不思議ですわねえ。主人はあまり、お酒も飲みませんのに、人様のお世話の出来るほど、バーに馴染があ
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