て、いらっしゃるの。あの方、ずーっと私の家に、居て頂きたかったのよ。それが、ちょっとした行き違いで、急に帰っておしまいになって、私ガッカリしているんですよ。子供もよく、なついていて、ほんとうにいい方だったわ。今、どうしていらっしゃるの?」
「まあ!」と、圭子は正直に呆れてしまった。妹の話では、奥さまとの感情の衝突で、たまらなく厭《いや》であるらしい容子であったが、この奥様のどこが、そんなに厭なのだろうか。見たところ、賢そうで、親切そうで、しかも現在、暇を出した後までも妹のことを案じていてくれるではないか。圭子の考えでは、これはどうしても、新子の心が、わがままで、強情であったとしか考えられなかった。
「奥様が、そんなに思っていて下さるのに、あの人わがままなんですのね。」と、心から気の毒そうに、申し訳をすると、
「いいえ。新子さんが、悪いわけでもないのよ。原因といえば、子供のけんかのようなの。ちょっとこうなのよ……」と、夫人はますます親しみを見せて、支度という字を、自分が小太郎に仕度と教えたことから、それが新子に支度と訂正されたことだけを、全部の原因のように面白|可笑《おか》しく話した。す
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