のお姉様だというもんだから、ついお目にかかりたくて、お呼びしたのよ。ご迷惑じゃなかった?」と、夫人は言葉遣いもやや砕けて、しかもそれだけ親しみを見せて、こぼれるような愛嬌だった。
「いいえ、どう致しまして、奥さまにお目にかかれて光栄ですわ。」
「失礼ですけれど、舞台の方に関係していらっしゃるだけあって、おなじご姉妹《きょうだい》でも、あなたの方が、ずっとお美しいのねえ。」
「あらまあ!」と、圭子が、うれしがるのを見て、夫人は新子とは違って、芯のないいかにも善良そうな圭子を、いよいよ料理しやすいと、見てとったか、気楽な、砕けた笑顔を向けながら、
「それに、あなたとなら、ほんとうのお友達になれそうだわ。」と、つづけざまに好餌をなげる。
五
鬼も棲《す》み、蛇《じゃ》も棲まん夫人の心の中を知らず、圭子は、夫人の愛嬌に眩惑され、前川さんも、良い方であるけれど、奥様は一倍ました、何という気の置けない、いい方だろうと感嘆していた。
夫人は、心の爪は、油断なく磨《と》いで、しかも面《おもて》は、笑みこぼれながら、
「新子さんとも、あれからまだお目にかかっていないのよ。今どうし
前へ
次へ
全429ページ中341ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング