始めた。
 女道楽の主人が、嫉妬ぶかい夫人を、操る手管を考えるように、夫人は、良人と新子と新子の姉との三人をどんなに扱うべきかを心ひそかに考えているのであった。
 これは、前にもいったように、夫婦らしい愛情からの嫉妬というよりも、冷えた夫婦愛が内攻して起る病的なものであるだけに、性質が悪性で、相手を苛めぬいて、出来るだけ、嫌がらせて満足を得ようというのである。
 良人が、自分をほんとうは、少しも愛していず、ただ上部《うわべ》の調子だけを合わしていることも、とっくに承知していた。だがそのために、今まで放蕩《ほうとう》したこともなく、長い物には巻かれろ主義で、ひたすら家庭平和を保持している良人が、物足りない以上に、憎らしくさえ思っている。こんないい機会に、良人を取っちめて、ご都合主義の仮面をとりはずしてやりたいという肚《はら》もあった。


 つい、目と鼻の四谷からであるから、二十分とは経たない内に、圭子は前川邸を訪れて来た。
 応接室に通されて、腰をかける暇《いとま》もなく、上機嫌の夫人に迎えられて、初対面の圭子はすっかりうれしくなっていた。
「どうぞお楽に。私一人でしたけれど、新子さん
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