子を取り出して、前川にかけさせた。
妙に興奮している新子は、ただ前川が自分のことを不安に思って、上って来てくれたことだけで、無上に嬉しく、言葉には云えぬ歓びを、微笑で示すほか、術《すべ》がなかった。
六
思い切り泣いた後の、開け放しの心を、のぞかれているような恥かしさで、微笑《ほほえ》んでいたが、新子は間もなく、緊張した、不安げな準之助の無言に、何か自分の方で、云わねばならないことを感じた。
「あのね。美和子が憎くて、泣いてしまいましたの。みっともないでしょう。」と、少し甘えて手を頬に当てながらいった。
準之助は、キャメルの灰を、無意識に、畳の上に落しながら、
「もっと、ほかのことがあったんでしょう。美和子さんから聞きましたよ。どうなすったんです?」と訊いた。
新子は、首を振りながら、ふとぶっつかった準之助の眼の中に、いつの間にか、愛人同士らしい複雑な表情が宿っているのを見て、あわてて眼を迯《そ》らせながら、自分でもいい加減な返事の出来ない気持になりながら、その場合無難な返事として、
「美和子が、何を申し上げたのでしょう?」と、彼女の方から訊ねてみた。
「美
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