泣いている内に、頭が熱して来て、終《しまい》には、悲しさも口惜しさもなく、ただ無暗《むやみ》と涙が出て来た。自分でも、こうしていては、止め度がないと思ったので、気を転じるために、階下《した》へ降りて行ってみようかと思いながら、一時涙を納めてみたが、頭の芯がポーッとしているし、こんな気持では、誰の話相手にもなれないと思ったので、(もう、階下へ行くのは止そう)と、新子は、狂的に頭を振りながら、また泣けそうになっていた。
 三十分も経ってから、やっと涙を納めて、考えると、いつか美沢のことは忘れて、階下にいる前川の姿だけが、大きく心の中に浮んでいた。
 こんなに、自分が降りて行かないのに、前川さんは、何かの方法で、自分のことを訊ねてくれてもいいのにといったような、甘えたような怨《うら》みっぽい気持で、また涙が出そうになった。
 それとも、前川さんは、もう帰ってしまったのかしら、そうとすれば少し薄情な、と思った。
 美和子が、つまらないことを云って、前川が気を悪くして、帰ったのではあるまいかと思うと、不安な気がして、容子を見に降りて行こうかと思うのだったが、しかし美和子の声がきこえて来ると、また
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