すか。」と、前川が素直に受けているのが、物足らず、
「云っちゃ、お姉さまに悪いかしら……」と、前川の気を引いておいてから、
「美沢さんね、ホラお姉さまの愛人だった人ね、その美沢さんが、さっきここへ来ていたの。そして、一揉《ひとも》めしたのよ。」
 前川は、さすがにいい気持がせず、
「揉めるって、どうして……」やや、せき込んで訊ねた。
「つまり、美沢さんは、私と結婚する気持なんかないのよ。ほんとうに、愛しているのはお姉さまで、私とのことなんか、一時の戯れだと云いに来たんだわ。ふふふ……」
 美和子は、わざと仰山《ぎょうさん》なしかめっつらをして、低く笑ってみせた。前川は、不快なショックを感じて、云うべき言葉がなくなった。
「それで、お姉さま、美沢さんを追って出て行ったのよ。今頃、しんみりと、どっかの裏通りを散歩してるんだわ。私、つまんないわ。」
 そう云うと、美和子はエレクトロラにかけ寄って、コンチタのレコードを、アンコールした。

        三

 街角に、美沢に取りのこされた新子は、ぼんやりしている間に、
「ハイ・ヨウ!」と、目の前を走りすぎる、お座敷へ急ぐらしい芸妓《げいしゃ
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