であった。
「いいわ。結構よ。」美和子は、亢然《こうぜん》と、それに答えると、一散に奥へ走って行った。
 新子は引き止める口実もなく、何もいうこともないのに、このまま別れるのが、何となく悲しく、別れるにしても、お互に心をいたわりながら別れたいと思うと、今五分でも十分でも、話がしたく、ズンズン扉口の方へ歩き去る美沢の後を追うて、横飛《よこっと》びに戸外へ飛び出すと、男の足早く、もう五、六間も歩き去っていた。
「美沢さん! 美沢さん!」四辺《あたり》を気がねしながら、呼んでみたが、美沢は痩せた肩を、聳《そび》やかしながら、後もふり返らず歩きつづけた。
「ちょっと! ちょっと!」新子も、小走りに後を追いかけたが、美沢はそこの四つ角へ出ると、駐車場の円タクの一つに、相場も定《き》めず、
「まあ!」と、駭《おどろ》く新子を尻目に、飛び乗ってしまった。

        二

 美和子は、姉と美沢とが、前後して戸外へ飛び出してしまうと、美沢とこのまま別れてしまうことが、何となく劇的で、かえって胸の轟くような亢奮《こうふん》を覚えて、彼女らしく激しい音楽が聴きたくなった。彼女は、エレクトロラの蓋を払
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