中は物の文色《あやめ》も分らないほど暗くなっているのを、二人とも気がつかなかったのである。電燈の光は、ボックスにさし向いになっている二人の姿を、美和子の前に、ありありと照し出した。
「まあ! 駭《おどろ》いた、美沢さんとお姉さまなの! まだお客さま、誰も来ないの。」
「………」新子は、妹の言葉など、耳にはいらなかった。
 美和子とても、さすがにその場の空気に馴染みがたいものを感じて、少々鼻じろんだような表情であったが、すぐ美沢の脇へ腰を降して、涙の跡の歴々《ありあり》と見える、姉の顔を見やりながら、
「二人で美和子の悪口を云っていたの?」と、二人の気持を救い、併せて闖入《ちんにゅう》して来た自分の気持も救おうという、よく考えた、さりげない言葉であった。
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  歩み寄る心




        一

 しかし、姉も美沢も、そんなことは縁が遠いと云うように、笑いもしなければ、美和子を見ようともしなかった。美和子も、取りつく島がなく、マッチを卓子《テーブル》の上で、カタカタと、弄《もてあそ》びながら、急に大人っぽい片頬笑いを浮べると、
「美沢さん。この間|中《じゅう》から、
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