つい皮肉な怨言《えんげん》を云ってしまった。
「それは……」
何か適当な弁解をしようと思ったが、結局前川との微妙な関係は、とうてい美沢には理解してはもらえそうもないので、
「つまりバーなんかに出るようなことになったことを云ったのですけれども、私別に前川さんに、ヘンな意味でお世話になんかなっていませんわ。」と、答えながらも、新子の声は心持ふるえていた。美沢は、すぐもろく折れて、
「いや、こんな質問は、僕としては余計なことでした……大変失礼しました。しかし、貴女がもう、以前のお心持に還《かえ》って下されないことだけは、僕に分ったような気がします。……そういう風に考えてもいいんでしょうね。」
これは、美沢としては、最後の質問だった。
しかし、新子の唇は、かすかに動いただけで、言葉は出なかった。
美沢は、新子の心の奥が、のぞかれたような気がして、索然としてしまった。
こんなに緊張した空気の中へ、いつ戸外からはいって来たのか、美和子が、
「あら、真暗ね!」と、扉口で、電燈のスイッチを押そうとしている声がした。新子はハッとなって、にじみ出ていた涙をかくした。
いつか夕闇が迫って、部屋の
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