よ。」
「いいじゃありませんか。遊び過ぎるくらいなら、貴女だってその方《かた》だって、お互に好きなんでしょう。」
「私は好き。でも、その方は私が好きかどうか疑問なのよ。その方ったら、新子姉さんを、とても好きだったの。今だって、きっと好きだと思うわ。」と、アケスケな話に、準之助は、思わず引かれるように、美和子と視線を合わせて、相手を見つめた。
「じゃアつまり、お姉さまと、愛人関係だったんですか。」と、緊張して訊いた。

        八

 新子に愛人があったかどうかは、前川にとって、かなり気にかかることだった。
「ええ、そうだったのよ。」と、美和子はアッサリ肯定してつづけた。
「でも、美沢さんって方《かた》、気が小さくて神経質でしょう、お姉様はデンと落着いている方《ほう》でしょう。だから、いつまで交際《つきあ》っていても、あまり発展しないのよ。ところが、この夏、お姉さまが軽井沢へ行ってしまったでしょう。その留守に淋しがりやの美沢さんは、少し自棄《やけ》で、私と遊んでしまった形があるのよ。……ところが、この頃、たちまちつまんなくなってしまったの。だって、結婚っていうことになると、美沢さ
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