手がるに片づけられてしまった。
「じゃ、この次、三回勝のジャンケン。三回つづけて勝てばいいの。」と、別のジャンケン遊びを始めたが、これも美和子は、可愛いかけ声に拘《かかわ》らず、どこか気合がすぐれていて、相手の気を釣って、巧みに勝ってしまった。
その時、新子がサービスしていた客が帰ったので、ようやく、前川のところへ来て、挨拶したが、みんなは美和子とたわいなく遊ぶのに夢中であった。美和子は、それと気づくと、芝居気たっぷりに、「マダムここへおかけにならない?」と、わざと席を立って、笑いもせずに、新子の袂《たもと》をとらえて、坐らせようとした。
「この人は、とてもいい子だね。」と、前川は楽しそうな眼で、新子を見上げた。新子は、前川が、美和子が、自分の妹であると知ったら、どんな顔をするだろうと、苦笑せずにいられなかった。美和子は、前川を姉に委せると、自分はまたお友達のグループにはいって、そこで賑やかにさわぎ出していた。
前川の一行が、しばらくしてから[#「しばらくしてから」は底本では「しばらしくてから」]勘定をすませて、帰りかけると、美和子は後を追うて、前川の背後にすがりつきながら、
「ね
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