来ないわよ。私のお友達に、適当なのがあるわ、つれて来てあげるわ。」
 新子は、美和子を見ながら、妹も満更役に立たないこともないと思った。美和子のお友達だったら、女学校は出ているし、モダンな娘だろうと思った。
「だって、貴女《あなた》のお仲間、そんなところで働くような境遇の人いないじゃないの?」
「いるわ、一人。働きたい働きたいっていっているの。もう先《せん》、仲のよかった人よ。ちょっと、可愛い人よ。」
「そうお。じゃ、早速連れて来て見せてくれない。」と、美和子の側《そば》へ坐ると、美和子も興奮しているらしく、美しい鳶《とび》のように、眼をかがやかしていた。
「お姉様ア、美和子も、手伝わしてよ。ねえ、いいでしょう。私、知合いのボーイを沢山、引っぱって来るわ。」新子は、初め美和子が冗談を云っているのかと思ったが、彼女はますます双眸を輝かして、
「美和子なら、いいじゃないの。お互に監督し合えばいいわ。前川さんは、スマートで、お金持なんでしょう。お姉さん、一人じゃ危いわ。」
「何を云っているの! 貴女は、美沢さんと結婚するのじゃないの。」
「そんなに、早く結婚なんかしないわ。つまんないもの。そ
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