があるのさ。上のお姉さまは、貴族《アリストクラット》よ。新子姉さまは平民で、あたしは芸術家《ボヒーミアン》よ。」
「なるほど、そうかもしれないな。」
「上のお姉さま、少しいやよ。家では、お高く止まって、結局皆に何かさせてしまうのよ。新子姉さまは、あまりに家のことを心配しすぎるのよ。つまり、貧乏性の損な性分なのよ。」
「君は?」
「ボクはね。とっても素敵さア。」
いきなり男の子のように、きらきらと眼を輝かした。
五
美沢は、いつの間にか、壁に背をもたせて、両足を前に投げ出していた。美和子と話していると、人間の男と女という気がしなくって、ついそんな遠慮のない姿勢になってしまうのだった。
美和子が、一茎の薔薇ならば、彼も一茎の植物の花になり、新鮮に軽快に、のびのびとした気持になるのだった。
コマシャくれた頭のいい妹と話しているような気になって、
「美和子ちゃん、君が素敵って、どんな風に素敵なのさ?」と、訊いた。
「そりゃ、キミがいわなくっちゃ。」白々と男の子のような、あどけなさで云った。
「チェッ、素敵なものか。僕に云わせりゃ、不良少女だぜ。」
「ああ、そう。私少
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