ぐ政府の役人によって捕縛《ほばく》されるだろう。そして、日本の峻厳《しゅんげん》な法律は、彼らの首を身体から斬り放つだろう。我々合衆国人の渡航によって好奇心を起し、我々の故国を慕うものを、われわれの手によって、断頭台の上へ追い登らせることは、アメリカ合衆国の恥ではないか。われわれの大統領が、われわれを日本へ送ったゆえんは、形式的な条約を結ぶためではない。孤島《ことう》のうちに空しく眠っている可憐な国民を、精神的に呼びさますことではないか。しかるに、今われわれの喚問《コール》に最初に答えたこの愛すべき先覚者、国民全体の触覚ともいうべき聡明叡知《そうめいえいち》なる青年の哀願に、聾《し》いたる耳を向けるということは、われわれが帯びている真の使命に対する反逆ではなかろうか。二人の青年を、日本政府の役人の目から隠して、日本政府の感情を傷つくることなしに本国へ送ることは、もしそれをやろうと思いさえすれば、はなはだ容易なことである。私は、提督がわが国建国以来の精神たる正義と人道との名において、この青年の志望に耳をかさんことを切望するものである」
ゲビスの熱弁は、すべての人を動かした。剛復《ごうふ
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