と、船の人々は手んでに物を、女に投げつけた。
 すると、女は怒って、川の中へはいると、舳《へさき》をぐっと水の中へ押し入れた。荷物が水びたしになった。船の連中は、人を雇《やと》って荷物を陸にあげ、水をかい乾《ほ》して、荷物を積んで、動き出そうとしてまた、女の悪口をいった。女は再び怒ると、今度はその船に手をかけて、人も荷物ものせたままグングン陸の上へ引きあげ、一町ばかり引きずって行った。船の連中は、青くなって、ひたあやまりにあやまった。女はやっと、機嫌《きげん》をなおして、また船を川まで、引きずりもどしてやった。

       六

 もう一人の女大力は、相撲人《すもうびと》、大井光遠の妹である。光遠は、横ぶとりの力強く足早き角力《すもう》であった。妹は、形|有様《ありさま》尋常《じんじょう》で美しい女であった。光遠とは、少し離れた家に住んでいた。ある日、村人が光遠の所へ馳《か》け付けて来て(たいへんです、妹さんが、盗人《ぬすびと》に人質にとられました)と云った。光遠は、それをきいたが、少しも驚かず(音にきく昔の薩摩《さつま》の氏家なら妹を質にとられようが)と、すましている。村人は、拍
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