うあく》な性質を受けたと見え、現在の闇市《やみいち》の親分のように、商人をいじめては、いろいろな品物を奪《うば》いとっていた。ところが、同じ時に尾張国《おわりのくに》片輪の里に力強き女がいた。この女は、きわめて小柄《こがら》の女であった。大力の聞え高い元興寺の道場法師の孫に当っていた。この尾張の女が、美濃狐のことを聞いて、一度試してやろうと云うので、蛤《はまぐり》と熊葛《くまつづら》で作ったねり皮とを船に積んで、小川の市へやって来た。こういう他国者の新顔を、痛めつけることは昔も今も暴力団的顔役の仕事である。美濃狐は、早速尾張の女の船へ行って、蛤を差し押えて、「お前は、一体、どこの者だ。誰にことわってここで商売をするのか」といった。尾張の女は、だまっていたが、四度目に(どこから来たか大きなお世話だ)と、返事した。すると、美濃狐が怒《おこ》って、尾張の女を打とうと手を出すと、尾張の女はその手を捕《とら》えて、熊葛のねり皮で打った。すると、あまりに力が強いので、そのねり皮に肉がくっついて来た。返すがえす打つと、その度に肉がついた。さすがの美濃狐も、音《ね》を上げて謝った。すると、尾張の女は、
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