ろ/\と、止めどもなく湧き出でた。と、今まで毅然として立つてゐた、直也の男性的な顔が、妙にひきつツたかと思ふと、彼の赭《あかぐろ》い頬を、涙が、滂沱《ばうだ》として流れ落ちた。
 美奈子は、恋人同士に、二人|限《き》りの久し振りの、やがて最後になるかも知れない会見を与へようと思つた。
「お母様! それでは、妾《わたくし》はお次ぎへ行つてをりますから。」
 さう云つて、美奈子は次ぎの部屋に去らうとした。すると、意外にも瑠璃子は、瀕死の声を揚げて云つた。
「美奈さん! あなたも――どうか/\ゐて下さい。」
 それは、かすかな、僅に唇を洩るゝやうな声だつた。
「お母様、妾《わたくし》もゐるのですか。妾もゐるのですか。」美奈子は、再び訊いた。母は、肯いた。いな肯くやうに、その重い頭を、動かさうとしたのだ。
 やがて、瑠璃子は、その衰へはてた眸を持ち上げながら、何かを探るやうな眼付をした。
「瑠璃さん! 僕です、僕です。分りますか。杉野ですよ。」
 直也も、激して来る感情に堪へないやうに叫びながら、瑠璃子に掩ひかぶさるやうに、その赭《あかぐろ》い顔を、瑠璃子の顔に触れるやうな近くへ持つて行つた。
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