めてゐた。美奈子の顔を見ると、彼女は懐しげな眸で物を云ひたさうにした。
「お母様! お気が付きましたか。」
 少し明るい気持になりながら、美奈子は母の耳許で叫んだ。
「あゝ、美奈さん。まだ? まだ?」

        五

 消えかゝる灯《ともしび》のやうに、瑠璃子の命は、絶えんとして、又続いた。
 翌日になつて、彼女の熱は段々下つて行つた。傷の痛みも、段々薄らいで行くやうだつた。が、衰弱が、いたましい衰弱が、彼女の凄艶な面《おもて》に、刻一刻深く刻まれて行つた。
 彼女の枕頭に、殆ど附き切つてゐる近藤博士の顔は、それにつれて、憂はしげに曇つて行つた。
「何《ど》うでせう、助かりませうか。」
 父の男爵は、傍に誰もゐないのを見計《みはから》うて、囁くやうに訊いた。
「希望はあります。けれど……」
 さう答へたまゝ、博士の口は重く噤《つぐ》まれてしまつた。
 美奈子は、さうした問を発することが、恐ろしかつた。彼女はたゞ、力一杯、心と身体との力一杯消え行かうとする母の魂に、縋り付いてゐる外はなかつた。昨夜中、眠らなかつた美奈子の身体は綿のやうに疲れてゐた。が、彼女は誰が何と勧めても母の病
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