床を去らうとはしなかつた。
 瑠璃子は、昏睡から覚める度に、美奈子の耳許近く、同一の問を繰返してゐた。が、その人は容易に、来なかつた。電報が運よく届いてゐるかどうかさへ、判然《はつきり》しなかつた。
 午後三時頃だつた。瑠璃子は、その衰へた視力で、美奈子をぢつと見詰めてゐたが、ふと気が付いたやうに云つた。
「青木さんは?」
 美奈子は愕然《ぎよつ》とした。彼女は、暫らくは返事が出来なかつた。
「青木さんは?」
 母は、繰り返した。美奈子は、顫へる声で答へた。
「何処へ行かれたか分りませんの。あの晩からずうつと分りませんの。」
 が、瑠璃子は、美奈子の表情で凡てを悟つたらしかつた。寂しい微笑らしい影が、その唇のほとりに浮んだ。
「美奈さん、本当を云つて下さい。妾《わたし》覚悟してゐますから。どうせ助からないのですから。」
 美奈子は、何とも口が利けなかつた。
「自首したの?」
 美奈子は、首を振つた。瑠璃子の衰へた顔に、絶望的な色が動いた。
「ぢや、自殺?」
 美奈子は、黙つてしまつた。彼女の舌は、釘付けられたやうに動かなかつた。
「さう! 妾《わたし》、さうだと思つてゐたの。でも今度|
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