息を、外《よそ》ながら、貪り求めてゐたのであらう。
 医者が、来たのは夏の夜が、はや白々とあけ初める頃であつた。
 一時間近くもかゝつたために、瑠璃子は、多量の出血のために、昏々として人事不省の裡にあつた。
 内科専門のまだ年若い医者は、覚束ない手付で、瑠璃子の負傷を見た。
 それは、可なり鋭い洋刀《ナイフ》で、右の脇腹を一突き突いたものだつた。傷口は小さかつたが、深さは三寸を越してゐた。
「重傷です。私は応急の手当をしますから、直ぐ東京から、専門の方をお呼び下さい。今のところ生命には、別条ないと思ひますが、然し最も余病を併発し易い個所ですから、何とも申せません。」
 医者の眉は、憂はしげに曇つた。
 いたいけな美奈子には、背負ひ切れないやうな、大切な仕事を、彼女は烈しい悲嘆と驚きとの裡に処理せねばならなかつた。その中で、一番厭だつたのは、医者が去るのと、入れ違ひに入つて来た巡査との応答だつた。
「加害者は、逃げたのですか。」
 美奈子は、何とも答へられなかつた。
「その青木と云ふ学生と、貴女のお母様は何う云ふ御関係があつたのです。」
 美奈子は、何とも答へられなかつた。
「何か兇行を
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