一語二語、腸《はらわた》から、しぼり出るやうな声だつた。
「お母様! そんなことを! 大丈夫でございますわ、大丈夫でございますわ。」
「いゝえ! わたし、覚悟してゐますの。美奈さんには、すみませんわね。」
 さう云つた母の顔は、苦痛のために、ピク/\と痙攣した。
 美奈子は、わあつ! と泣き出さずにはゐられなかつた。
「それで、わたし貴女《あなた》に、お願ひがあるの。あの、電報を打つときに、神戸へも打つていたゞきたいの!」
 瑠璃子は、恐ろしい苦痛に堪へながら、途切れ/\に話しつゞけた。
「神戸! 神戸つて、何方《どなた》にです?」
 美奈子は、怪しみながら訊いた。
「あの、あの。」瑠璃子は苦痛のために、云ひ澱んだやうだつたが、「あの、杉野直也です。わたし、新聞で見たのです。月|初《はじめ》に、ボルネオから帰つて、神戸の南洋貿易会社にゐる筈です。死ぬ前に一度逢へればと思ふのです。」
 瑠璃子は、やつと喘ぎながら云ひ終ると、精根が全く尽きたやうに、ガクリとくづほれてしまつた。
 二年の間、恋人のことを忘れはてたやうに見せながらも、真《まこと》は心の底深く思ひ続けてゐたのであらう。恋人の消
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