たとき、明るい光は、痛ましい光景を、マザ/\と照し出した。母の白い寝衣《ねまき》、白いシーツ、白い毛布に、夜目には赤黒く見える血潮が、ベタ/\と一面に浸んでゐる。
「あつ?」
美奈子は、一眼見ると床の上に、よろめきながら打ち倒れた。が、母を気遣ふ心が、直ぐ彼女を起ち上らせた。
「お母様! しつかりなさいませ!」
彼女は、さう叫びながら、母に縋り付いた。致命の傷を負ひながら、彼女は少しも取り乱した様子はなかつた。右の脇腹の傷口を、両手でぢつと押へながら、全身を掻きむしるほどの苦痛を、その利かぬ気で、その凜々しい気性で、ぢつと堪《こら》へてゐるのだつた。
彼女のかよわい肉体の血は、彼女が抑へてゐる両手の間から、惜しげもなく流れ出してゐるのだつた。
美奈子も一生懸命だつた。自分の寝台のシーツを取ると、それを小さく引き裂いて、母の傷口を幾重にも幾重にもくゝつた。
「お母様! 気を確《たしか》になさいませ。直ぐ医者を呼びますから。」
彼女は、母の耳元に口を寄せて、必死に呼んだ。それが、耳に入つたのだらう、母は、かすかに頭を動かした。大理石のやうに、光沢のあつた白い頬は、蒼ざめて、美しい
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