「お母様! お母様!」
 美奈子は、つゞけ様《さま》に、縋り付くやうな悲鳴を揚げた。
 母の答はなかつた。
 低い、しぼり出るやうな悲鳴が、物凄く闇の中に起つてゐるだけだつた。
「あ! お母様!」
 美奈子は、堪らなくなつて、寝台から転び落ちた。
 母の寝台は、二尺とは離れてゐなかつた。彼女が、顫へる手を、寝台の一端にかけたとき、生あたたかい液体が、彼女の手にベツトリと、触れた。
「お母様!」彼女の声は、わな/\と顫へてゐた。
 彼女の手は、母の胸に触れた。母の華奢な肉体が、手の下でかすかにうごめいた。
「お母様! お母様! 何う遊ばしたのです。」彼女は、懸命の声を揚げた。
 低い呻き声が、しばらく続いてゐた。
「お母様! お母様! 気を確《たしか》になさいませ。」美奈子は、狂つたやうに叫んだ。
 母は、烈しい苦悩の下から、しぼり出すやうに答へた。
「燈火《あかり》を! 燈火を!」
 傷《きずつ》ける者、死なんとする者が、第一に求めるものは光明だつた。
 美奈子は立上つて電燈を探し求めた。狼狽《あわて》てゐる故《せゐ》か、電燈がなか/\手に触れなかつた。
 が、やうやくスヰッチを捻つ
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