に、十二時が鳴つた。彼女は、駭《おどろ》いて眠《ねむり》に入らうとした。が、その夜の烈しい経験は、――彼女が生れて以来初めて出会つたやうな複雑な、烈しい出来事は、彼女の神経を、極度に掻き擾《みだ》してゐた。彼女が、いくら眠らうとあせつても、意識は冴え返つて、先刻の恐ろしい情景が、頭の中で幾度も幾度も、繰り返された。青年の凄いほど、緊張した顔が、彼女の頭の中を、巴《ともゑ》のやうに馳け廻つた。
眠らう眠らうとあせればあせるほど、神経が益々いらだつて来た。記憶が、異常に興奮して、自分の生ひ立ちや、母の死や父の死や、兄の事などが、頭の中に次ぎ/\に思ひ浮んで来た。
その裡に一時が鳴つた。
瑠璃子も、寝台《ベッド》の中で、暫らくの間は、眠り悩んでゐたやうだつたが、その裡に、おだやかな鼾《いびき》の声が聞え初めた。
母が、眠《ねむり》に就いたのを知ると、美奈子は益々あせつてゐた。口の中で、数を算へて見たり、深呼吸をして気持を落ち着けようと試みたりした。が、それもこれも無駄だつた。先刻聴いたばかりの青年の怨みの声が、落ち着かうとする美奈子の心の裡に、幾度も/\甦つて来た。
その裡に、二時
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