、一番親しい、一番愛してゐる貴女を傷けようとは、夢にも思はなかつたのです。何と云ふ皮肉でせう。何と云ふ恐ろしい皮肉でせう。」
 母の心の悶えは、益々烈しくなつて行くやうだつた。
「妾《わたし》の生活が、破産する日が、到頭来たのです。妾《わたし》の生活の罰が、妾《わたし》の最も愛する貴女の上に振りかかつて来ようとは。」
 瑠璃子の声はかすかに顫へてゐた。
「妾《わたし》は、今までどんな人から、どんなに妾《わたし》の生活を非難されても、ビクともしなかつたのです。妾《わたし》の生活態度のために、犠牲者が出ようとも、ビクともしなかつたのです。妾《わたし》は、孔雀のやうに勝ち誇つてゐたのです。凡ての男性を蹂み躙つてゐたのです。が、男性ばかりを蹂み躙つてゐるつもりで、得意になつてゐると、その男性に交つて、女性! しかも妾《わたし》には一番親しい女性を蹂み躙つてゐたのです。」
 瑠璃子は、さう云ひ切ると、ぢつと面《おもて》を垂れたまゝ黙つてしまつた。
 美奈子は、母の真剣な言葉に依つて、胸をヒタ/\と打たれるやうに思つた。母が、自分のために何物をも犠牲にしようと云ふ心持、自分を傷けたために、母が感じ
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