つたことが、一二度あつたのです。そのもしや[#「もしや」に傍点]が、本当だと云ふことが分ると、妾《わたし》は、大変なことが起つたと思つたのです。妾《わたし》の犯した失策が、取り返しのつかないものだと云ふことを知つたのです。」
母の言葉が、ます/\真剣な悲痛な響を帯びて来た。
美奈子は、俎上に上つたやうな心持で、母の言葉をぢつと聴いてゐる外はなかつた。恥かしさと悲しさとで、裂けるやうな胸を持ちながら。
「妾《わたし》、今度のことで、妾《わたし》の生活が全然破産したことを知つたのです。男性に向つて吐いた唾が、自分に飛び返つて来たことを知つたのです。どうか、美奈さん。妾《わたし》の懺悔を聴いて下さい。」
快活な、泣き言などは、ちつとも云つたことのない母の声が、悲しみに湿《うる》んでゐた。
七
「青木さんなんかに、妾《わたし》初めから、何の興味も持つてゐなかつたのです。青木さんを箱根へ連れて来たのなども、妾《わたし》のホンの意地からなのです。ある別な男の方に対する妾《わたし》の意地からなのです。ある男の方が、妾《わたし》に、青木さん丈《だ》けは、誘惑して呉れては困ると
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