すわ。」
美奈子は、消え入るやうな声で云つた。彼女は暫く考へてゐたが、
「青木さんなんかよりも、妾《わたし》美奈さんに済まないと思つてゐますの。どうぞ、堪忍して下さい。どうぞ。」
母の声には、深い本心が、アリ/\と動いてゐた。美奈子でさへ、一度も聴いたことのないやうなしんみりとした、心の底からにじみ出たやうな声だつた。
「美奈さん。間違つてゐたら、御免なさい。妾《わたし》、貴女のお心が分つたの。青木さんに対する貴女のお心が。」
さう、心の底を見抜かれると、美奈子は、サツと色を変へながら、うつ伏してしまつた。
「美奈さん、貴女《あなた》は、一昨日の晩、妾《わたし》と青木さんとが、話したことをすつかり、お聴きになつたのでせう。いゝえ、貴女がお聴きになつたのではなく、貴女がいらつしやるとは知らずに、妾《わたし》達がいろ/\なことを話しましたでせう。妾《わたし》、あの晩部屋へ帰らうとして、外出なさらうとする貴女のお顔を見たときに、もう凡てが分つたやうな気がしたのです。絶望その物のやうな貴女のお顔を見て、妾《わたし》は、凡てが分つたやうな気がしたのです。妾《わたし》は、それまでにもしやと思
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