》、妾……」
 美奈子は、もつと何か云ひたさうだつたが、烈しい興奮のために、胸が迫つたのだらう、そのまゝ口籠つてしまつた。
 去りかけようとした青年は、美奈子の言葉を聴くと、一寸ためらひながら、美奈子の方を振り返つた。
「美奈子さん。貴女の御厚意は、大変有難うございます。が、もう凡ては終つたのです。僕の心は、蹂み躙られたのです。僕の心には、今悲みと怨みとがあるばかりです。さやうなら、貴女には、いろ/\失礼しました。」
 さう云ひ捨てると、青年は弾かれたやうに、身体を飜すと、緩い勾配の芝生の道を、一気に二十間ばかり、馳け降りると、その白い浴衣《ゆかた》を着た長身で、公園の闇を切る姿を見せてゐたが、直ぐ樹立の蔭に見えずなつた。
 美奈子は、淋しみとも悲しみとも、あきらめ[#「あきらめ」に傍点]とも付かぬ心で、消えて行く青年の姿を追うてゐた。
 瑠璃子も、一寸青年の後姿を見てゐたやうだつたが、直ぐ思ひ返したやうに立ち上ると、美奈子の傍に寄つて来て、すれ/\に腰をかけた。
「美奈子さん! 駭いて?」
 軽く左の手を、美奈子の肩にかけながら、優しく訊いた。
「はい。青木さんが、お気の毒でございま
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