ゐるつもりです。僕の貴女に対する恋、それは、僕に取つては初恋です。大切な懸命な初恋でした、凡てを犠牲にしてもいゝと思つた初恋です。が、それが……」
青年は、茲《こゝ》まで云ふと、自分自身で、こみ上げて来る口惜しさに堪へ切れなくなつたやうに、ハラ/\と涙を落した。
「……それが貴女のために、ムザ/\と蹂み躙られてしまつたのだ。覚えていらつしやい! 奥さん。」
彼は、自分の感情を抑へ切れなくなつたやうに、かう叫んだ。
立つてゐる華奢な長身が、いたましくわなわな[#「わなわな」に傍点]と顫へて、男泣きの涙が、幾条《いくすぢ》となく地に落ちた。先刻《さつき》から美奈子は、青年の容子を見てゐるのに、堪へないやうに、目を伏せてゐたが何と思つたのか此時ふと顔を上げた。
「お母様!」
彼女はかすれたやうな声で、初めて口を開いた。
六
「お母様!」
さう叫んだ美奈子の言葉には、思ひ切つた処女の真剣さが、籠つてゐた。
「お母様、あのう、もう一度、どうぞもう一度、ゆつくりお考へ下さいませ。青木さんが何《ど》う仰しやつたのか知りませんが、もう一度考へ直して下さいませ。妾《わたくし
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