。が、夫以外の一番親しいものとして、妾《わたし》貴君に何時までも、何時までも、交際《つきあ》つていたゞきたいと思ふのよ。ねえ! 美奈さん。貴女に妾《わたし》の心持は分らない!」
 瑠璃子は、意味ありげに、美奈子を顧みた。今まで少しも、分らなかつた今夜の瑠璃子の心持が、闇の中に、一条の光が生れたやうに、美奈子にもほの[#「ほの」に傍点]/″\と分つて来たやうに思へた。

        五

 美奈子には、母の心持が、朝霧の野に、日の昇るやうに、やうやく明かになつて来た。
 母は自分の心持をスツカリ気付いたのだ。青年に対する自分の心持をスツカリ知つて了つたのだ。
 母が、自分の面前で、何のにべ[#「にべ」に傍点]もないやうに、青年を斥けたのも、みんな自分に対する義理なのだ。自分に対する母の好意なのだ。自分に対する母の心づくしなのだ。さう思ふと、烈しい恥かしさを感じながら、母に対する感謝の心が、しみ/″\と、胸の底深くにじん[#「にじん」に傍点]で出た。
 母は、やつぱり自分を愛して呉れる、自分のためには、どんなことでも、しかねないのだ。さう思ふと、美奈子は、母に対して昨日今日、少しでも慊
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