ろ、貴君《あなた》のお申出《まうしいで》に応ずることが出来ないのでございます。」
瑠璃子の言葉に、闘牛が、止《とゞ》めの一撃を受けたやうに、青年の細長い身体が、タヂ/\と後へよろめいた。
彼は、両手で頭を抱へた。身体を左右に悶えた。呟きとも呻きとも付かないものが口から洩れた。
美奈子は、見てゐるのに堪へなかつた。もし、母が傍にゐなかつたら、走り寄つて、青年の身体を抱へて、思ふさま慰めてやりたかつた。
二分ばかり、青年の苦悶が続いた。が、彼はやつと、その苦悶から這ひ上つて来た。
母から受けた恥辱のために、彼の眼は血走り、彼の眥《まなじり》は裂けてゐた。
「あなたのは、お断りになるのではなくて、僕を恥しめるのです。僕がそつとお願ひしたことを、美奈子さんの前で、貴女《あなた》にはお子さんかも知れないが、僕には他人です、その方の前で、恥しめるのです。拒絶ではなくして、侮辱です。僕は生れてから、こんな辱しめを受けたことはありません。」
青年は、血を吐くやうに叫んだ。青年の言葉は、恨みと忿《いかり》のために狂ひ始めてゐた。
「貴女は、妖婦です、僕は敢て、さう申上げるのです。貴女を、貴婦
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