あつた。箱根の山の大自然の中に、茲《こゝ》ばかり一寸人間が細工をしたと云つたやうな、こましやくれ[#「こましやくれ」に傍点]た、しかし、厭味のない小公園だつた。
園の中央には、山上から引いたらしい水が、噴水となつて迸つて、肌寒いほどの涼味を放つてゐた。
三人は、黙つたまゝ園内を、彼方此方《あちらこちら》と歩いた。誰も口を利かなかつた。皆が、舌を封ぜられたかのやうに、黙々としてたゞ歩き廻つてゐた。
三人が、少し歩き疲れて、片陰の大きい楢の樹の下の自然石の上に、腰を降した時だつた。先刻から一言も、口を利かなかつた瑠璃子が、突然青年に向つて話し出した。しかも可なり真剣な声で。
「青木さん! 此間のお話ね。」
青年は、瑠璃子が何を云つてゐるのか、丸切《まるき》り見当が付かないらしかつた。
「えつ! えつ!」彼は可なり狼狽したやうに焦つてゐた。
「此間のお話ね。」
瑠璃子は、再びさう繰り返した。彼女の言葉には、鋼鉄のやうな冷たさと堅さがあつた。
「此間の話?」
青年は、如何にも腑に落ちないと云つたやうに、首を傾げた。
丁度その時、美奈子は母と青年との真中に坐つてゐた。自分を、中央に
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