つた。彼女は、青年のために、心の動顛してゐる青年のためにも、母の勧めに、おいそれと従ふことは出来なかつた。
「いゝぢやありませんの。図書室なんか、今晩に限つたことはないのでせう。ねえ! いらつしやい。妾《わたし》お願ひしますから。」
 母は、余儀ないやうに云つた。さう云はれゝば、美奈子は、同行を強ひて断るほどの口実は何もなかつた。たゞ彼女には、自分を極力同行せしめようとする母の真意が、何うしても分らなかつた。
「ねえ! 青木さん! 美奈さんと、三人でなければ面白くありませんわねえ。二人|限《きり》ぢや淋しいし張合がありませんわねえ!」
 母は、青年に同意を求めた。
 何もかも知つてゐる美奈子は、母のやり方が、恐ろしかつた。青年が、嫌ひだと云ふものを、グングン咽喉に押し込むやうな、母の意地の悪い逆な態度が、恐ろしかつた。美奈子は、ハラハラした。青年が、母の言葉を、何う取るかと思ふと、ハラ/\せずにはゐられなかつた。青年は、果してカツとなつたらしかつた。それかと云つて、美奈子の前では、何の抗議を云ふことも出来ないらしかつた。
「僕! 僕! 僕は、今日は散歩に行きたくありません。失礼します、
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