考へて見る』『解つてゐる』さう云ふ一時逃れのお返事には、もうあき/\しました。僕は、全か若《も》しくは無を欲するのです。徹底的なお返事が欲しいのです。貴女が、若し『否』と仰《おつ》しやれば、僕も男です。失恋の苦しみと男らしく戦つて、貴女に決して未練がましいことは云はないつもりです、僕は貴女に、承諾して呉れとは云はないのです。孰《どち》らでも、ハツキリとしたお返事が欲しいのです。こんな中途半端な気持の中《うち》に、いつまでも苦しんでゐたくないのです。僕は、貴女の全部を掴みたいのです。でなければ僕はむしろ、貴女の全部を失ひたいのです、恋は暴君です、相手の占有を望んで止まないのです。」
 青年は、男らしく強くは云つてゐるものの、彼が瑠璃子に対して、どんなに微弱であるかは、その顫へてゐる語気で明かに分つた。
「一体考へて見るなんて、何時まで考へて御覧になるのです。五六年も考へて見るお積《つもり》なのですか。」
 青年は、恨《うらみ》がましくやゝ皮肉らしく、さう云つた。
「いゝえ。明後日まで。」
 瑠璃子の答は、一生懸命に突つ掛つて来た相手を、軽く外したやうな意地悪さと軽快さとを持つてゐた。
 
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