母に迫つてゐるらしかつた。顫へる声が、変に途切れて、傍聞《わきぎ》きしてゐる美奈子までが、胸に迫るやうな声だつた。
が、母は平素《いつも》のやうに落着いた声で云つた。
「解つてゐますわ。」
母の冷静な答に、青年が満足してゐないことは明かだつた。
「解つてゐます。さうです、貴女は何時でも、さう云はれるのです。僕が、何時か貴女に申上げたときにも、貴女は解つてゐると仰しやつたのです。が、貴女が解つてゐると仰しやるのと、解つてゐないと仰しやるのと、何処が違ふのです。恐らく、貴女は、貴女の周囲に集まつてゐる多くの男性に、皆一様に『解つてゐる』『解つてゐる』と仰しやつてゐるのではありませんか。『解つてゐる』程度のお返事なら、お返事していたゞかなくても、同じ事です。解つてゐるのなら、本当に解つてゐるやうに、していたゞきたいと思ふのです。」
青年が、一句一語に、興奮して行く有様が、目を閉ぢて、ぢつと聴きすましてゐる美奈子にさへ、アリ/\と感ぜられた。
が、母は、何と云ふ冷静さだらうと美奈子でさへ、青年の言葉を、陰で聴いてゐる美奈子でさへ、胸が裂けるやうな息苦しさを感じてゐるのに、面と向つて聴い
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