てゐる当人の母は、息一つ弾ませてもゐないのだつた。青年が、興奮すればするほど、興奮して行く有様を、ぢつと楽しんででもゐるかのやうに、落着いてゐる母だつた。
「解つてゐるやうにするなんて? 何《ど》うすればいゝの?」
言葉|丈《だけ》はなまめかしく馴々しかつた。
母の取り済した言葉を、聴くと、青年は火のやうに激してしまつた。
「何うすればいゝの? なんて、そんなことを、貴女は僕にお聞きになるのですか。」青年は、恨めし気に云つた。「貴女は僕を、最初から、僕を玩具にしていらつしやるのですか。僕の感情を、最初から弄んでいらつしやるのですか。僕が折に触れ、事に臨んで、貴女に申上げたことを、貴女は何と聴いていらつしやるのです。」
青年の若い熱情が――、恋の炎が、今烈々と迸つてゐるのであつた。
六
青年が、段々激して来るのを、聴いてゐると、美奈子はもう此の上、隠れて聴いてゐるのが、堪らなかつた。
彼女の小さい胸は、いろ/\な烈しい感情で、張り裂けるやうに一杯だつた。青年の心を知つたための大きい絶望もあつた。が、それと同時に、青年の烈しい恋に対する優しい同情もあつた。母の
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