とは、云ひ兼ねたらしかつた。
「ぢや、美奈さんを残して置きませうか。」
 母は青年に相談するやうに云つた。
 さう聴いた青年の面《おもて》に、ある喜悦の表情が、浮んでゐるのが、美奈子は気が付かずにはゐられなかつた。その表情が、美奈子の心を、むごたらしく傷けてしまつた。
「ぢや、美奈さん! 一寸行つて来ますわ。寂しくない?」
 母は、平素《いつも》のやうに、優しい母だつた。
「いゝえ、大丈夫ですわ。」
 口|丈《だけ》は、元気らしく答へたが、彼女の心には、口とは丸切り反対に、大きい大きい寂しさが、暗い翼を拡げて、一杯にわだかまつ[#「わだかまつ」に傍点]てゐたのだ。
 母と青年との姿が、廊下の端《はづれ》に消えたとき、扉《ドア》の所に立つて見送つてゐた美奈子は、自分の部屋へ駈け込むと、床に崩れるやうに、蹲まつて、安楽椅子の蒲団に顔を埋めたまゝ、暫らくは顔を上げなかつた。熱い/\涙が、止め度もなく流れた。自分|丈《だ》けが、此世の中に、生き甲斐のないみじめ[#「みじめ」に傍点]な人間のやうに、思はれた。誰からも見捨てられたと云つたやうな寂しさが、心の隅々を掻き乱した。
 友達にでも、手紙を
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