まあ! そんなに、おつしやるのなら参りますわ。」
 美奈子は口|丈《だけ》は機嫌よく云つて、重い/\鉛のやうな心を、持ちながら、母の後から、従《つ》いて行くのだつた。
 が、ある晩、それは丁度箱根へ来てから、半月も経つた頃だが、美奈子の心は、何時になく滅入つてしまつてゐた。
 母が、どんなに云つても、美奈子は一緒に出る気にはならなかつた。その上、平素《いつも》は、青年も口先|丈《だけ》では、母と一緒に勧めて呉れるのが、その晩に限つて、たつた一言も勧めて呉れなかつた。
「妾《わたくし》、今夜はお友達に手紙を書かうと思つてゐますの。」
 美奈子は、到頭そんな口実を考へた。
「まあ! 手紙なんか、明日の朝書くといゝわ。ね、いらつしやい。二人|丈《だけ》ぢやつまらないのですもの! ねえ、青木さん!」
 さう云はれて、青年は不服さうに肯いた。青年のさうした表情を見ると、美奈子は何うしても断らうと決心した。

        二

「でも、妾《わたくし》、今晩だけは失礼させて、いたゞきますわ。一人でゆつくり、お手紙をかきたいと思ひますの。」
 美奈子が、可なり思ひ切つて、断るのを見ると、母はさまで
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