うぜん》としてさう云つた。心の中の同情が、言葉の端々に溢れてゐた。さう云はれると、美奈子も、自分の寂しい孤独の身の上が顧みられて、涙ぐましくなる心持を、抑へることが出来なかつた。
「母が、本当によくして呉れますの。実の母のやうに、実の姉のやうに、本当によくして呉れますの。でも、やつぱり本当の兄か姉かが一人あれば、どんなに頼もしいか分らないと思ひますの。」
 美奈子は、つい誰にも云はなかつた本心を云つてしまつた。
「御尤もです」青年は可なり感動したやうに答へた。「僕なども、兄弟の愛などは、今までそんなに感じなかつたのですが、兄を不慮に失つてから、肉親と云ふものの尊さが、分つたやうに思ふのです。でも、貴女なんか……」さう云つて、青年は一寸云ひ淀んだが、
「今に御結婚でもなされば、今のやうな寂しさは、自然無くなるだらうと思ひます。」
「あら、あんなことを、結婚なんて、まだ考へて見たこともございませんわ。」
 美奈子は、恥かしさうに周章《あわて》て打ち消した。
「ぢや、当分御結婚はなさらない訳ですね。」
 青年は、何故だか執拗に再びさう訊いた。
「まだ、本当に考へて見たこともございませんの。」
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