美奈子の処女らしい無邪気な慎しやかさが、青年の心を可なり動かしたやうだつた。それと同時に青年の上品な素直な優しい態度が、美奈子の心に、深く/\喰ひ入つてしまつた。
宮城野の橋まで来ると、谿は段々浅くなつてゐる。橋下の水には水車が懸つてゐて、銀《しろがね》の月光を砕きながら、コト/\と廻り続けてゐた。
月は、もう可なり高く上《のぼ》つてゐた。水のやうに澄んだ光は、山や水や森や樹木を、しつとり濡してゐた。二人は、夏の夜の清浄《しやうじやう》な箱根に酔ひながら、可なり長い間橋の欄干に寄り添ひながら、佇んでゐた。
美奈子の心の中には、青年に対する熱情が、刻一刻潮のやうに満ちわたつて来るのだつた。今までは、どんな男性に対しても感じたことのないやうな、信頼と愛慕との心が、胸一杯にヒシ/\とこみ上げて来るのだつた。
話は、何時の間にか、美奈子の一身の上にも及んでゐた。美奈子は到頭、兄の悲しい状態まで話してしまつた。
「さう/\、そんな噂は、薄々聴いてゐましたが、お兄《あにい》さんがそんなぢや、貴女《あなた》には本当の肉親と云つたやうなものは、一人もないのと同じですね。」
青年は悵然《ちや
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