がるほど、しつこく苛めようとするのですからね。本当にあの時の、貴女《あなた》のお言葉は地獄に仏だつたのです。はゝゝゝ。考へて見れば、僕も余り臆病すぎたな。とんだ所を貴女方に見せてしまつた!」
青年は、冗談のやうに云ひながらも、美奈子に対する感謝の心だけは、可なり真面目であるらしかつた。
「まあ! あんなことなんか。妾《わたくし》、本当に電車に乗りたかつたのでございますわ。」
美奈子は、顔を真赤にしながら、青年の言葉を打ち消した。が、心の中はこみ上げて来る嬉しさで一杯だつた。
「あの時、僕は本当に貴女の態度に、感心したのです。あの時、露骨に僕の味方をして下さると、僕も恥しいし、お母様も意地になつて、あゝうまくは行かなかつたのでせうが、貴女の自然な無邪気な申出には、遉《さすが》の荘田夫人も、直ぐ賛成しましたからね。僕は、今まで荘田夫人を、女性の中で最も聡明な人だと思つてゐましたが、貴女のあの時の態度を見て、世の中には荘田夫人の聡明さとは又別な本当に女性らしい聡明さを持つた方があるのを知りました。」
「まあ! あんなことを。妾《わたくし》お恥かしうございますわ。」
さう云つて、美奈子は
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