た言葉を噛みしめるやうに繰り返した。
 二人は、また暫らく黙つて歩いた。が、もう先刻《さつき》のやうなギゴチなさは、取り除かれてゐた。美しい自然に対する讃美の心持が、二人の間の、心の垣を、ある程度まで取り除けてゐた。美奈子は、青年ともつと親しい話が出来ると云ふ自信を得た。青年も、美奈子に対してある親しみを感じ初めたやうだつた。
 四五尺も離れて歩いてゐた二人は、何時の間にか、孰《どち》らからともなく寄添うて歩いてゐた。
 美奈子は、相手に話したいことが、山ほどもあるやうで、しかもそれを考へに纏めようとすると、何も纏まらなかつた。唖が、大切な機会に喋べらうとするやうに、たゞいら/\焦り立つてゐるばかりだつた。
「さう/\、貴女《あなた》に申上げたいことがあつたのです。つい、此間中から機会がなくて。」
 青年は、大切なことをでも、話すやうに言葉を改めた。動き易い少女の心は、そんなことにまで烈しく波立つのだつた。

        五

 相手がどんなことを云ひ出すのかと、美奈子は、胸を躍らしながら待つてゐた。
 青年は、一寸云ひ憎さうに、口籠つてゐたが、やつと思ひ切つたやうに云つた。
「此
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