ら、突然散歩に誘はれたのであるから、彼女が駭《おどろ》きの目を刮つたまゝ、わく/\する胸を抑へたまゝ、何とも返事が出来なかつたのも、無理ではなかつた。
青年は、美奈子の返事が遅いのを、彼女が内心当惑してゐる為だと思つたのであらう。彼は、自分の突然な申出の無躾さを恥ぢるやうに云つた。
「いらつしやいませんですか。ぢや、僕一人行つて来ますから。僕は、日の暮方には、どうも室の中にぢつとしてゐられないのです。」
青年は、弁解のやうに、さう云ひながら室を出て行かうとした。
美奈子は、胸の内で、青年の勧誘に、どれほど心を躍らしたか分らなかつた。青年とたつた二人切りで、散歩すると云ふことが、彼女にとつてどんな駭きであり欣びであつただらう。彼女は、駭きの余りに、青年の初めの勧誘に、つい返事をし損じたのであつた。彼女は、どんなに青年が、もう一度勧めて呉れるのを待つたであらう。もう一度、勧めてさへ呉れゝば、美奈子は心も空に、青年の後から従《つ》いて行くのであつたのだ。
が、青年には美奈子の心は、分らなかつた。彼には、美奈子が返事をしないのが、処女らしい恥しさと後退《しりごみ》のためだとより、思はれ
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