せんわ。だつてお兄さんだつて妾《わたし》には可なり近しい方だつたのですもの。」
さう云つて夫人は淋しく笑つた。
「でも、いゝぢやありませんか。妾《わたし》と一緒ですもの。それでもお嫌ですか。」
さう云つて、嫣然《えんぜん》と笑ひながら、青年の顔を覗き込む瑠璃子夫人の顔には、女王のやうな威厳と娼婦のやうな媚《こび》とが、二つながら交つてゐた。
瑠璃子の前には、小姓か[#「小姓か」は底本では「小姓が」]何かのやうに、力のないらしい青年は、極度の当惑に口を噤んだまま、その秀でた眉を、ふかく顰めてゐた。背丈こそ高く、容子こそ大人びてゐるが、名門に育つた此の青年が対人的にはホンの子供であることが、瑠璃子にも、マザ/\と分つた。
ある三角関係
一
その裡に、美奈子達の一行は改札口を出てゐた。駅前の広場には、赤帽が命じたらしい自動車が二台、美奈子達の一行を待つてゐた。
青年は、瑠璃子夫人の力に、グイ/\引きずられながらも、自動車に乗ることは、可なり気が進んでゐないらしかつた。
彼は哀願するやうに、オヅ/\と夫人に云つた。
「何うです? 奥さん。僕お願ひなのですが
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