奈さん! 貴女《あなた》は何う思つて?」
などと黙つてゐる彼女を、会談の圏内に入れようとする毎に、美奈子は淋しい微笑を洩す丈《だけ》だつた。
美奈子は、青年の姿を見ない前までは、青年の同行することは、恐ろしいが同時に限りない歓喜がその中に潜んでゐるやうに思はれた。が、それが実現して見ると、それは恐ろしく、寂しく、苦しい丈《だけ》であることが、ハツキリと分つた。此先一月も、かうした寂しさ苦しさを、味はつてゐなければならぬかと思ふと、美奈子の心は、墨を流したやうに真暗になつてしまつた。
六
汽車は、美奈子の心の、恋を知り初めた処女の苦しみと悩みとを運びながら、グン/\東京を離れて行つた。
夫人と青年との親しさうな、しめやかな、会話は続いた。夫人は久し振《ぶり》に逢つた弟をでも、愛撫するやうに、耳近く口を寄せて囁いたり、軽く叱するやうに言つたりした。青年は青年で、姉にでも甘えるやうに、姉から引き廻されるのを欣ぶやうに、柔順に温和に夫人の言葉を、一々微笑しながら肯《き》いてゐた。
美奈子は、母と青年との会話を、余りに気にしてゐる自分が、何だか恥しくなつて来た。彼女
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